知財関連コラム

知財Q&Aコーナー(19)

Q:特許権を侵害した場合の損害賠償について教えて下さい。

A:特許権は財産権ですので、他人がこれを侵害した場合には、原則として民法の規定にしたがい損害賠償の責を負うことになります。加えて特許法では、発明が「無体物」であることに鑑み、侵害事件においては被告人に過失があったものと推定して立証責任の転換を図るといった趣旨の特則等も設けられており、権利者を厚く保護しています。
 昨今、特許権侵害事件における損害賠償額は、国内外いずれにおいても高額化している傾向にあります。日本で争われた有名な事件の例では、パチスロ機メーカー2社に対して総額84億円という高額の賠償を命ずる判決がありました。これは、業界大手のアルゼ社が、サミー社とネット社を訴え、総額100億円の賠償を求めいていた事件での東京地裁の判決です。当時のサミー社に対する約74億円の賠償金額は、それ以前の日本の特許権侵害事件における損害賠償として最高額であった胃潰瘍治療薬「H2ブロッカー」事件での30億円を大きく上回るものとなったことで、知財業界でもだいぶ話題になりました。一方、中国での訴訟例ですが、中国の「正泰集団」という企業が、電気部品(遮断器)の実用新案権を侵害されたとして、フランスの「シュナイダー」という企業(中国企業との合弁会社)を訴えて、3.3億元(約56億円)の賠償を認める判決が出された事件もありました。
 このように、高額の損害賠償請求も度々認められるようになっている状況において、自社のビジネスを展開していく際には、他人の知的財産権を侵害しないための対応がますます重要となります。したがって、入念な先行技術調査等を実施して、安全・安心に自己実施を確保することに努めて下さい。

弁理士 岡村 隆志

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