知財関連コラム

知財Q&Aコーナー(16)

Q:アイディアや思いつきだけでは「特許」にならないと聞きましたが、どういうことなのでしょうか?

A:「特許」が認められる「発明」という観点で捉えた場合、「アイディア」だけでは「発明」は未完成です。詳しく説明しますと、特許の出願を行う際に作成する書類(「明細書」と言います)に発明を記載するときには、発明の目的、構成、効果をできるだけ具体的に記載し、その明細書を見れば、誰もがその発明を実施できる程度まで、具体的構造・動作などが示されていなければなりません。すなわち、アイディアや思いつきを技術的に解決するのが発明なのです。例を挙げますと、「山で採取した木材を現地で細片化してチップとし、これを山から、風や水の力を用い送出管によって工場等に輸送する」という発明がありました。しかし、出願の明細書には、実際に山の採取現場から工場までどのようにして送出管を敷設するのか、あるいは、この送出管の具体的な構造、さらには、風や水の力をどのように利用するのか、といった技術的な内容が明確に記載されていませんでした。結局、この発明は、具体的な技術が書かれていないので実施不能である、という理由により、審査において特許を認めない(「拒絶査定」と言います)との結果となりました。つまり、ただ単に、アイディアや思いつきだけを出願したとしても特許にならないとは上記のような例を言います。別の表現として、単なる「願望を表現したに過ぎない」と言われることもあります。いずれにしても、具体的な実現方法が記載されなければ、特許は望めません。逆に言えば、アイディアや思いつきを具体的に実現する「発明」として記載できれば特許が認められ得るということなのです。

弁理士 岡村 隆志

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