知財関連コラム

特許実務雑感7

 最高裁に上告される前の知財高裁での判決は、真正プロダクトバイプロセスクレーム(物の構成や特性が特定できないもの)と不真正プロダクトバイプロセスクレーム(物の構成や特性が特定できるがあえて製法的記載を用いているもの)に分けて考えている。そして、真正プロダクトバイプロセスクレームについては、物同一説に従って物の構成で発明の同一性を判断し、不真正プロダクトバイプロセスクレームについては、物の構成として記載できるにもかかわらずあえて製法的記載で物を特定しているのであるから、その製法に特定された物の構成であると解釈して発明の同一性を判断する(製法限定説)というものである。個人的には、これが最も柔軟で無理のない解釈ではないかと思われるのである。プロダクトバイプロセスクレームの取り扱いは、国ごとにばらばらであり、発明の要旨認定(審査・審判の場面)では物同一説を採用するが、技術的範囲の確定(侵害訴訟)の場面では製法限定説を採用する国は多い。
 そもそも、特許請求の範囲の記載は、出願人が自らの判断で保護を求めようとする発明について決定する自由度を有しており、物の発明として保護を求めても製法の発明として保護を求めても自由なのである。この記載要件と審査・審判実務の取り扱いに齟齬が生じているのではないかと個人的には感じるのである。
 近年の知財高裁判決では、物の発明であるにも関わらずその製法が記載されていても、特許請求の範囲、明細書、図面等の記載からその物の構成が明らかな場合にはプロダクトバイプロセスクレームに該当しない、との判例が出されており、最高裁判決を過度に適用すべきでない旨の修正が図られている。

弁理士 平井 善博

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