知財関連コラム

知財Q&Aコーナー(47)

Q:特許出願書類(明細書)に記載のある事項は全て権利範囲となるのでしょうか?

A:特許庁に特許出願を行う際に発明内容を記載する書類である「明細書」は、主要な部分として「特許請求の範囲」および「発明の詳細な説明」という記載項目が設けられています。これらのうち、特許権としての権利範囲を定めるのが「特許請求の範囲」の記載です。
 したがって、明細書に記載のある事項が全て権利範囲になるという訳ではありません。例えば「発明の詳細な説明」の中で、広い範囲の発明を記載してあったとしても、「特許請求の範囲」に狭い範囲しか記載していない場合には、その狭い部分しか権利として主張できないこととなります。
 ただし、記載に関する規則によって、「特許請求の範囲」は簡潔に書くことが義務付けられていますので、権利範囲の解釈が明確でない場合も生じてきます。そこで、「特許請求の範囲」に記載された用語の定義などが「発明の詳細な説明」に記載されている場合には、そのような「発明の詳細な説明」中の記載が参酌されて、権利範囲を確定させるケースもあります。
 なお、特許になる前の段階(例えば、特許庁において審査が行われて、その応答を行っている段階など)においては、「発明の詳細な説明」中に記載されている事項を、「特許請求の範囲」に組み込む補正手続をとることができます。したがって、出願公開時の情報(具体的には、「公開特許公報」)だけで他人の権利範囲を解釈してしまうと、その後に補正手続が行われることによって最終的な「特許請求の範囲」が公開時とは相違することとなり(例えば、広くなり)、侵害を構成するといった場合もあり得ますので、特に注意が必要です。

弁理士 岡村 隆志

トップへ戻る