知財関連コラム

特許実務雑感19

 その他の特許要件として、先願であること、準公知に該当しないこと、発明の単一性の要件を満たしていること、発明の記載要件を満たしていること、などがある。ある発明に対して特許を付与する場合、先に発明した者に特許を付与する先発明主義と、先に特許出願した者に特許を付与する先願主義の二通りの考え方があるが、日本は先願主義を採用している。先発明主義は発明日時の証明が困難である等の弊害が多い。発明の先後は特許請求の範囲に記載された発明どうしで対比して行われる。準公知は、拡大された先願の地位ともいわれるが、後願の出願後に出願公開された(原則として出願から1年6月経過後に出願内容が公開される)先願の当初明細書又は図面に記載された発明についても特許されない。何ら新規な発明を開示するものではないからである。後願若しくは準公知に該当しても、問われているのは発明の同一性であるから、補正によって非同一としてしまえば、拒絶理由は比較的容易に解消できる。発明の単一性は、出願発明が複数発明を包含し互いに異なる技術的課題を解決する手段を含んでいる場合に、審査において指摘される場合が多い。発明の単一性欠如した場合には、特許請求の範囲から該当する請求項を削除補正するか、別途権利化を図りたいのであれば分割出願することになる。分割するのは、審査を受けてない請求項又は明細書記載事項である。記載要件としては、特許請求の範囲に記載された発明が、当初明細書の発明の詳細な説明に記載されたものであること、発明が明確であることを要する。また、明細書の発明の詳細な説明には、請求の範囲に記載された発明が、所謂当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていることを要する。

弁理士 平井 善博

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