知財関連コラム

特許実務雑感18

 進歩性欠如の拒絶理由解消を検討するうえで、実務上最も悩ましいのが、出願発明Xが構成要件A十Bから成る発明で、公知引用文献が同一技術分野の公知技術Aを開示する公知文献1と公知技術Bを開示する公知文献2との組み合わせで、解決すべき課題や作用効果も特に相違がなく、格別な阻害要因も見当たらないケースである。皆さんならこの場合どう対応しますか?
 権利化を諦めるのは簡単ですが、諦めきれない場合には相当悩みます。しかしながら、こんな場合でも、経験上おそらく2通りぐらいは検討の余地があると思われる。
 先ず1つ目は、他の構成要件Cの追加です。要は発明Xを構成要件A十Bから構成要件A十B+Cに減縮補正する。この場合、構成要件Cは実施例に開示されており公知文献には開示が無い要素であり、引用発明に対して有利な効果が存在していることが望ましい。
 2つ目は、構成要件A(例えば駆動手段)をより下位概念a(例えばモータ)に具現化する補正(a十B)を行う。公知文献に駆動手段として油圧シリンダが開示されていた場合、モータに限定することでより高精細な駆動制御が行えるほかに、油漏れなどの心配がなくメンテナンスしやすい、などの有利な効果の主張ができる。もちろん、公知文献との相違点を際立たせるには、構成要件Bの下位概念bをさらに持ち出して構成要件a十bと補正することも考えられる。以上の対応は、引用文献の記載に応じて選択すればよく、ケースバイケースですが、諦めなければ、道は開けると思われる。どうしても打開策が見いだせない或いは補正案を作成したがこれで大文夫か、迷ったら審査官面接をお勧めします。審査官に直接会って話してみると、どこをどの程度補正すれば特許されるか感触がつかめるケースがあります。

弁理士 平井 善博

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