知財関連コラム

知財Q&Aコーナー(13)

Q:他者の特許権を侵害してしまった場合の影響について教えて下さい。

A:他者の特許権を侵害してしまった場合には、刑事罰と民事上の訴追を受ける可能性があります。具体的には、特許法において「特許権を侵害した者は、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金に処し、またはこれを併科する」との規定があります。これに加えて、「法人の代表者は、その従業者が特許権侵害の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に対して3億円以下の罰金刑を科する」との規定もあります。ただし、これらの規定は、侵害と認められた場合に、必ず適用されるという訳ではありません。ちなみに、知的財産権の侵害事件において刑事罰が適用されるケースとしては、商標権に関する偽ブランド品の販売行為などが挙げられます。一方、民事上の訴追について、具体的には、侵害行為すなわち侵害品の製造・販売に対する差止請求や、侵害行為により受けた損害の賠償請求などが主となります。事業を継続していくうえで、損害賠償を請求されることは、当然、受ける影響も大きいですが、それ以上に影響が大きいのは、事業すなわち製品の製造・販売自体が停止させられる差止請求であるといえます。製品の製造・販売を行うことができなければ、収益を上げる手段がなくなってしまう訳ですから、それまでに投資した研究開発費・設備費の回収ができないのはもちろんのこと、事業が継続できなくなる危機につながる可能性も少なからず生じてきます。同時に、事件が新聞などに掲載されれば、企業としてのイメージダウンも避けられません。このように多大な影響を受けることとなる特許権侵害を避けるために、常に他社の権利を注視していくことが重要となります。

弁理士 岡村 隆志

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