知財関連コラム

ビジネスに役立つ商標 文化的所産の商標登録その2

 文化的所産が商品や包装に対してデザインや装飾として使用される場合もあります。
 例えば国宝に指定されている「紙本著色花下遊楽図の図形」を指定商品「被服、清酒」を指定して商標登録出願した場合には、被服の取引業界では商品のデザインとして絵画を用いることが一般的であり、また清酒の取引業界では商品のラベルや包装に絵画を用いることが一般的であるため、需要者にはデザインの一種であるとの認識にとどまり、識別性が無い(商標法3条1項6号違反)として拒絶されます。
 また、「ウエストミンスター大寺院」の文字、「東大寺(立体的形状)」、「賀茂神社の神紋(図形)」などを商標登録出願した場合、これらは世界遺産登録等、公の機関により登録や指定がなされている文化的所産を表す標章であり、特定の宗教法人を表す標章として著名なものであるため、商標法4条1項6号違反として指定商品又は指定役務にかかわらず拒絶されることになります。
 なお、文化的所産には、その著名性により強い顧客吸引力を有するものもありますが、文化的所産に何ら関係のない第三者がその文化的所産の顧客吸引力にあやかって商標登録しようとする場合、一般的道徳観念や国際信義に反するものと判断され、公序良俗違反(商標法4条1項7号違反)として拒絶される可能性もあります。
 このように、文化的所産を商標登録しようとする場合、状況により複数の拒絶理由が通知されることもあります。

弁理士 傳田 正彦

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