知財関連コラム

ビジネスに役立つ商標 家紋の商標登録その(2)

 家紋について商標登録しようと出願した場合、特許庁の審査官から以下のような理由に基づく拒絶理由通知が届きます。
 伝統的な家紋であって、戦国時代の武家の家紋などの周知・著名な家紋については、地方公共団体等の公的機関が、地元のシンボルとして地域おこしや観光振興のために使用することも少なくありません。このような場合に、家紋と関係ない第三者が商標登録を受けてしまうと、地域住民全体の不快感や反発を招き、地域おこし等の施策の遂行を阻害することになってしまいます。
 また、家紋の中には、他家での使用を厳しく禁じ、現代においても特定の家やゆかりの神社等を表す紋として使用され、広く一般に認識されているような場合があります。このような場合に、家紋と無関係な第三者が商標登録を受けることは、家紋が表す特定の家等の著名性や顧客吸引力に便乗することになってしまいます。
 このように、伝統的な家紋について商標登録を認めてしまうと、著しく社会的妥当性を欠き、公正な取引秩序を乱し、社会公共の利益に反することとなります。
 ただし、上記のような判断にあたっては、その家紋又はその家紋に係る人物の周知・著名性及び利用状況や、国民又は地域住民の認識、出願の経緯・目的・理由、当該家紋又は当該家紋に係る人物と出願人との関係等の事実を総合的に勘案して行われます。したがいまして、場合によっては登録可能性もあるということになります。

弁理士 傳田 正彦

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