知財関連コラム

特許実務雑感11

 職務発明規定の改正には、賛否両論があり、特に、研究者・開発者には根強い反発がある。発明はあくまで自然人固有の能力の発揮によってなされるものであるため、法人帰属にすると、クリエイターの地位の低下を招き、技術開発が停滞するのを憂慮する立場からである。また、従業者は、折角創意工夫して新たな技術開発をしても特許を受ける権利が当初から会社に帰属してしまうのでは、発明意欲の減退を招く。
 この問題に我々代理人が深く関与することが難しい。なぜなら、会社の財産(職務発明)をいかに取り扱うかは私的自治の問題であり、第三者が介入すべき問題ではないからである。要は、会社側としては優秀な技術者を集めたいという思惑がある一方で、特許管理の合理化を図りたいという現実的なニーズがある。また、従業者としては、クリエイターを大切にしない会社には所属したくないし、開発意欲を削がれる仕事はしたくないというのが本音である。
 これについては、経営者と従業者(若しくは代表者)が十分な話し合いの場を持っていただいて、両者にとって納得のいく合意形成をしてほしいというのが、私の願いである。その結果が、職務発明を法人帰属とするか従業者帰属とするかは方法論に過ぎない。
 ちなみに、著作権法にも、職務著作に関する規定があり、一定の条件で法人著作が認められている(著15条)。また、映画のようにたくさんのクリエイターが関与する著作物の場合の著作者についても、著作物の全体形成に創作的に関与した者、即ち監督やプロデューサー等であることが明記されている(著16条)。

弁理士 平井 善博

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