知財関連コラム

特許実務雑感5

 特許法上発明のカテゴリーは、経時的な要素を含まない物の発明と経時的な要素を含む方法の発明の2つに分かれるが、方法の発明は更に単純方法と物を生産する方法の発明の2つに分かれる。
 例えば半導体製造装置、記録装置といった○○装置に代表される物の発明、モータ駆動方法、ロボットアームの制御方法といった△△方法に代表される単純方法の発明、プリント基板の製造方法といった□□製造方法に代表される物の製造方法の発明である。
 解釈論として時を構成要素に含むか含まないかで物と方法の発明に分けているが、実際は明確に切り分けることは難しい。物の発明であっても時の要素が入りこむ余地は十分にある。例えば、成形品は溶融した樹脂等が特定の形状に固まったものであるが、最終的に固化した成形品の状態から見れば物の発明ととらえられるが、成形プロセスを含めた解釈をすれば成形方法或いは成形品の製造方法の発明にもなり得る。
 特許出願書類のなかで権利化を要求する発明を記載する書面として特許請求の範囲(通称:クレーム)がある。この特許請求の範囲の記載について、近年最高裁判例が示されて、プロダクトバイプロセスクレームに関する特許庁の審査基準が変更された。プロダクトバイプロセスクレームとは、物の製造方法によってその物を特定するクレームのことである。このプロダクトバイプロセスクレームの取り扱いについてはグレーゾーンが多い。発明自体は物の発明として記載されているが、その物の製法によって特定するクレームが記載されている場合、審査において不明瞭な記載であるとして拒絶理由通知が発せられる。この記載不備として扱う審査の取り扱いが、個人的には極めて不可解な部分が多いと感じるのである。

弁理士 平井 善博

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