知財関連コラム

特許実務雑感3

 今回から、特許法そのものに軸足を移してお話することとする。クライアントさんから、新規に開発した発明品について特許出願のご依頼を頂く場合、異口同音として語られる言葉は「模倣品の発生を抑えたい」ということに尽きる。
 物の所有権について規律する法律は、民法なのだが、民法で扱う物は有体物に限られている。即ち、技術的アイデアは無体物であり、有体物のように占有することができない。無体物であるが故に、他人の開発した技術的アイデアを盗用して類似品を製造できてしまう。しかしながら、この行為を民法で取り締まることはできない。そこで、民法の特別法として特許法を含む産業財産権法が規定されている。
 特許法の存在を知っていた場合はもちろん、その存在を知らなくても、自社製品に対して他社保有の特許権の行使を受ける場合があり得るのである。そんなこと言われても特許なんてそうたやすく取れるものではない、と思われるかもしれない。
 しかしながら、開発者の多くが新製品を生み出す段階で何らかの創意工夫を行っているわけであり、それは技術的課題を解決する手段に他ならない。例えば、自ら提案する場合と相手先からの要望とを問わず、開発技術は従来品に比べて小型化、軽量化、低コスト化等様々テーマに取り組んだ結果である場合がほとんどである。これが発明そのものに他ならない。即ち、ある技術的課題を解決する手段としての製品や製法が発明そのものである。ただ、特許になるか否かは所定の要件をクリアしているか否かで決まるのである。
 IoT、AI、3Dプリント技術等、技術革新が目覚ましい今日、技術開発競争に乗り遅れることなく自社開発技術を第三者の模倣盗用から守りつつ、無形の会社の資産として保護するために、特許法を含む産業財産権制度の利用をお勧めする次第である。

 弁理士 平井 善博

トップへ戻る